世話人:天木 明
今月の絵
台風も過ぎ去り、秋晴れの続いた10月16日、17日の両日、恒例の「秋の写生会」を播州室津で行いました。ご存知の方も多いかと思いますが、この室津は天平時代から続く瀬戸内の港町とか。大小の漁船が集う漁港、参勤交代の西国大名が上陸時に利用した本陣跡も残る家並み等、写生をするには大変魅力的な所でした。現地到着後まずはロケハン。結局青い海、港を囲む緑の小山にひかれて全員漁港に挑戦することに決定。目の前の漁港で揚がった新鮮な魚で腹ごしらえをしてからおもむろにスケッチ開始。
明日も描けると思うと何となく気分に余裕が出来ていつもより少しは描き込めたかも。あたりには我々以外にもスケッチをされる方がちらほら。皆さん文句なしに快適な環境でのゆったりした時間を楽しんでおられる様子でした。陽が正面の小豆島方向に傾きかけたあたりで、今日は店仕舞い。
描きかけの船に「明日もここに居てくれよ。」と念じつつ高台にある今宵の宿へ。宿の名は「きむらや」。インターネットで調べて予約した宿でしたが、結構知る人ぞ知る類の割烹旅館だった様で谷崎潤一郎、竹久夢二が夫々この旅館を題材に「乱菊物語」、「室津」を書き残している他、池波正太郎の「食卓の情景」にも登場していました。正太郎氏は赤穂の御崎から漁船を雇って室津を訪れ、「木村旅館という小さな宿へ入って、タコの酢ノ物で酒を二合のみ、幼女のごとくあどけない老婆手製の穴子丼を食べて、すっかりうれしくなってしまった。」と書いています。この正太郎氏のくだりは、柄に似合わず昔は文学青年だったと云うメンバーの村田修一氏から仕入れたものですが....。
われわれの夕食も新鮮そのものの刺身、柿の白和え、さざえの壺焼きにはじまり、煮物、揚物、等々、締めの栗ご飯に至るまでの盛り沢山、まあ皆さんよく喰った事。チーとは年も考えなければいけませんネ。勿論この席でもさすがは塾のOB、「知識は知っているだけでは駄目、消化して、他人の役に立てるようになって初めて能力と呼ぶ事が出来る」等と福澤先生が聞かれたら「ウムよしよし。」と云われそうなレベルの高い会話もあった事も付記しておきます。まあ、これだけ喰えば後は爆睡。
翌朝はまだ暗いうちからから出て行く漁船の音を聞きながら更にウトウト。二日目も快晴。幸い前日に描いた船共も未だお休み状態で、朝日を浴びた漁港の色合いは何とも最高。この色をどこ迄出せたかはまあ問題ですが。かくして昼過ぎには大いに楽しんだ写生会も幕。恒例の講評では「まあ船は難しいモチーフだから....。それでも皆そこそこ描けましたネ。」との社交辞令を頂きニヤニヤ。今回の雰囲気は前田夫人の作品で感じて頂けると思います。次回の写生会あたりでは最近メンバーになられた鳥巣BRB編集長の名作が紙上を飾ると思われますので乞うご期待。写生会のご報告はこれでおしまい。皆さん水彩をやりましょう。
イーゼル会世話人 天木 明
≪今月の絵≫
≪今月の絵≫
お水取りで有名な奈良東大寺二月堂、その二月堂へ大仏殿の裏側から上って行く二月堂裏参道近辺が今回の写生会の会場。旅行案内書にも「二月堂裏参道は土壁が美しく、絵になる。」と、紹介されていますが、土壁だけでなく、二月堂の背景となる若草山に連なる山々の新緑が目に染みる様。緑の中を吹き抜ける爽やかな風と、遠くから聞こえる遠足の小学生達の元気な声に包まれて実に快適な一日でした。作品の出来の方はまあ人それぞれ、雰囲気は師範代五代先輩作の<今月の絵>でお楽しみ下さい。
≪今月の絵≫
≪今月の絵≫
新年あけましておめでとうございます。
イーゼル会メンバー一同今年も楽しくいろいろ描いて参ります。水彩に興味のある方是非ご参加下さい。
例会は、毎月第一・第三木曜日の午後二時~五時迄、場所は神戸慶應倶楽部・倶楽部ルームです。お待ちしております。
イーゼル会世話人 天木 明