児玉先生の健康講座



 

 

 

 




2014年4月号掲載

歯とお口の健康#8
歯がないのに歯科治療が必要なの?
歯科の機能と肺炎予防


児玉秀樹 平22年大学院経営管理研究科卒

さて今回の話題は肺炎予防です。最近、西田敏行さんの肺炎予防のCMをご覧になった方はおられませんか?実は、肺炎と口腔は深い関係にあるのです。

(1.歯科医療の診療領域)
諸先輩方からすると、歯科医師の児玉がなぜ肺炎の話?と思われるかもしれません。多くの方にとって、歯科医療とは、むし歯・歯周病そして義歯治療が一般的なイメージです。

しかし上図のように、歯科には多くの診療領域があるのです。口腔ケアとは、お口の中をきれいにすることだけではなく、お口を管理するものです。摂食嚥下リハビリテーションとは、口から食べることができなくなった方に、口から食べる訓練を行うものです。有病者歯科とは、脳梗塞や心筋梗塞、重度の糖尿病の方などの歯科治療を意味します。外傷は、特に子供や高齢者などに多く発生し、顔面から転倒する事故が原因のほとんどです。当院では、外傷の方がとても多く、周辺各自治体の救急車も受け入れています。ガン治療とは、大きく二つの領域に分かれます。口腔ガンそのものを治療することと、口腔ガンの術後、顔面が切り取られ顔が変わってしまうので、顔面を埋めるシリコン製の顔面を付けたりした術後のガン治療です。

このように、国民の多くが一般的にイメージする歯科医療は右側で、ほとんどの歯科医院は右のみの診療です。それに対し、ガン治療など左側は一般的に知られていません。当院は口腔外科も行っており、左まで積極的に行っている珍しい歯科医院です。

(2.肺炎と口腔ケア  歯がないのに口腔ケア?)
平成23年、肺炎は日本人の死因の第3位に躍り出ました。医学の進歩と高齢化の影響により、いわゆる3大疾病(心疾患、脳疾患、ガン)はある程度治せるようになってきました。つまり、すぐには死なない慢性疾患を持っている高齢者数を増やすことになりました。このため現在では、高齢者の直接的は死因の約半数は、肺炎を含む感染症で亡くなることが多くなっているのです。

口は毎日使います。そして食べカスが溜まりやすいために、口腔は元々が汚染をしやすい環境にあるといえます。また、高齢者は唾液の分泌量が減少し口腔内が乾燥しやすいのです。さらに摂食嚥下機能(噛み飲み込む力)の低下のためムセや誤嚥(唾液や食べ物が気管に入ること)が生じ易い。こういった色々な原因により高齢者は元々肺炎を起こすリスクが非常に高いのです。

また、脳梗塞など全身の疾患などにより、手が動かなくなっていきます。そうなると自分では口腔内をきれいに歯磨きすることが難しくなっていきます。

静岡県の歯科医師米山武義先生の研究報告によると、右グラフのように口腔ケアを行うと、高齢者の発熱発生数が大きく下げられることがわかってきました。このため、現在、厚生労働省は高齢者の施設や、各自治体に高齢者の口腔ケアを普及させるように取り組んでおります。

(3.歯が無いのに歯医者が必要?)
私は、歯医者が歯だけを治す時代はもう終わったと思います。私が在宅診療に行くと、多くの方が肺炎で苦しんでおられます。そして、ガンからは生き残ったのに、脳梗塞からは生き残ったのに、肺炎を起こすという理由から、口から食べることを禁止されてしまっている方を多く見ています。人生の生きる楽しみは、最後の最後は、食べる楽しみではないでしょうか? 歯が無くても、口から食べる幸せを守る、そのために歯はなくても口腔ケアは必要、そして、歯はなくても歯医者は必要なのです。

2014年1月号掲載

歯とお口の健康#7
国民皆保険を嫌がる
アメリカ医療保険と介護保険の歴史


児玉秀樹 平22年大学院経営管理研究科卒

親愛なる神戸慶應倶楽部のみなさんご無沙汰しております。歯科医師の児玉秀樹です。BRBでのコラムを再開してほしいとのお声をいただき感謝しております。今後もよろしくお願いいたします。

さて、アメリカで連邦政府の閉鎖が長引き、債務不履行になる恐れがあったというニュースは記憶に新しいと思います。その原因となる争点は、オバマ大統領が国民皆保険制度(オバマケア)を導入しようとしていることだそうです。どうしてアメリカの保守派は国民皆保険を反対するのか不思議に思いませんか?日本の医療保険、介護保険は色々と問題点はあるものの、日本には当たり前のように根付いています。それを廃止しようなんて人はいませんよね。しかし、アメリカはTPPで日本の皆保険制度を狙っているという噂さえあります。

シッコ(マイケルムーア監督)という映画をご覧になった方はおられませんか?その中に象徴的なシーンがありました。チェーンソーで指を何本も切り落とした事故のケースです。それをカナダとアメリカで比較しました。カナダは日本に近い皆保険制度があり、指をすべてつなぐ医療費は無料でした。しかし、アメリカの場合、指をすべてつなぐと数百万円かかるので、支払ができる範囲でどの指をつなぐか指を選択したというものです。結局、その男性はお金が払えなくて何本かは諦めざるを得なかったという衝撃的なシーンでした。

アメリカの場合、自己責任というのが考えの根底にあるのでしょう。しかし誰もが病気になることがあるし、介護を受けなくてはならない状態になる可能性があります。ちなみに、親知らずの抜歯は、日本では3割負担でおよそ3000〜5000円前後ですが、アメリカでは、10万円から30万円といわれています。

そもそも、医療保険制度とはいつ生まれたのでしょうか?それは産業革命期のドイツで生まれました。当時鉄血宰相と言われたビスマルクは、まず、軍人だけを保護しました。その後、産業革命により生まれたブルーカラー層を保護するために、医療保険をつくりました。これにより、労働者は病気にかかると医療費が払えなくなり貧しくなるということから開放されました。このように医療保険は防貧という役割をもつことにより共産革命を防ぐ目的で作られました。その後、アメリカを除く先進国では、国民皆保険制度が当たり前になり、日本では介護保険も導入されたのです。

それではなぜアメリカの保守派は国民皆保険を嫌がるのでしょうか?そこにはアメリカの独立の理念が関係します。そもそもアメリカはイギリスの植民地でした。今日ではアフリカやアジアなど多くの国が独立していますが、アメリカの独立だけは少し特殊です。アフリカやアジアの国の独立の多くは異民族からの独立です。それに対してアメリカは清教徒などのイギリス人が同じ民族のイギリスから独立を実現したものです。

それではなぜアメリカがイギリスからの独立を求めたのでしょうか?そもそもの独立の理由はイギリスが植民地に対して課税をしたことに端を発しました。当時イギリスは植民地に砂糖税や茶税などを課しました。しかし、植民地側は本国議会に議席はありませんでした。このため、自らの代表がいない課税に怒りを爆発させたのです。「代表なくして課税なし」の理念は、元々マグナカルタにあります。そしてその怒りがボストン茶会事件を起こし、独立戦争へとつながっていくのです

このように、アメリカ建国の歴史は、植民地住民は自らが、自らの意志で、教会、学校、道路、病院などを築いてきた歴史なのです。その伝統が医療にも根付いているのです。医療費の負担は自らの責任で負う。アメリカは小学校の時から建国の理念を叩き込まれます。自由、平等、博愛、そして自己責任です。

そのため、アメリカは先進国でも珍しい国民皆保険の無い国なのです。

2013年4月号掲載

歯とお口の健康#6
PM2.5北京からの大気と東海道山陽新幹線
どっちが汚染している?


児玉秀樹 平22年大学院経営管理研究科卒

神戸慶應倶楽部のみなさん、こんにちは。今回はPM2.5についてです。

神戸市によると、3月5日に中国より飛来したと思われるPM2.5の値が60μg/m3(以下単位を省略します)近くを観測し日本の環境基準を大きく超えたと発表されました。このためマスクの販売量が増えているとの報道もあり、マスクをして外出されている方も多いのではないでしょうか?

最近話題のPM2.5ですが、今回初めて知ったという方がほとんどではないでしょうか?実はこのPM2.5については、医師や歯科医師でも知らない先生がほとんどなのです。なぜ、歯科医師の児玉がこのPM2.5 について以前から問題視していたかというと、在宅歯科の患者さんが、COPDや肺炎でお亡くなりになる方が多かったという事情があるからです。

このPM2.5とは、直径が2.5μm以下の超微粒子を意味しますので、すべてのPM2.5に害があるというものではありません。問題なのは、PM2.5物質に発がん性物質などが含まれている場合が問題であるということです。PM2.5が10増えると、全死亡率が6%増えると言われています。なぜ、危険かというと、本来私たちの体は、体に異物が入ると咳をしたりクシャミなどをして体から排出します。しかし、PM2.5は髪の毛の1/40とあまりにも小さいので、人体は体から排出することができないのです。

例えば、日常でもキッチンでフライを揚げたり、焼き魚を作ったりすると、PM2.5はおよそ200とか500とかいう量まで急激に増えます。しかし、増えたからと言って死ぬことはありません。北京の大気汚染は、日本大使館の情報によると、およそ700、米国大使館の情報では800を超えた日もあったようです。中国のPM2.5は、窒素酸化物や硫化物などの発がん性物質が含まれる危険なPM2.5なのです。

ちなみに、日本の基準はつい2009年まで150(古い基準)とかなり甘いものでした。WHOの指針では25です。日本は遅れていると指摘され続けていました。現在は米国と同じ35で、世界からするとまだ甘いといえます。

さて、私たち兵庫県民の乗る東海道山陽新幹線はPM2.5で汚染されているというのはご存知ですか?東海道山陽新幹線は全席禁煙です。しかし、東北上越長野秋田山形新幹線は全面禁煙です。全席禁煙と全面禁煙の違いはご存知ですか?

産業医科大学の大和教授の研究によると、東海道山陽新幹線は喫煙ルームがあるために、本来禁煙車両であるはずの客室やデッキでも、およそ60から100を超えています。日本の環境基準をはるかに超える値でとても危険です。さらに喫煙室に至っては450をはるかに超えています。これは喫煙者本人にとっても米国基準で緊急事態であることを意味します。さらに喫煙ルームを掃除する労働者に至ってはさらに悲惨な状況が予測されます。

*表はr単位なので、μg単位に換算すると、およそ100倍してみてください。また、喫煙室の評価基準とは現在の環境省基準とは異なる古い基準です。

東海道山陽新幹線の最新型のN700系の車両には4か所まんべんなく喫煙ルームがある全席禁煙車両です。ですから、赤ちゃんを連れたママが実家の東京に新幹線で帰る時に、赤ちゃんのために禁煙車両で予約したつもりが、隣に喫煙者が座った場合、喫煙ルームから帰ってきたあと、肺から無色の発がん性物質が出てきますので、40分前後受動喫煙にさらされます。名古屋くらいまでいけそうですかね。

 

 

さらに、米国の環境保護局のPM2.5の基準かみてみましょう。タクシーの中で喫煙するとおよそ1000を超えるという値です。ドライブ中にご主人がタバコを吸うとこうなりますよね。奥様や子供の受動喫煙は米国基準では緊急事態という分類になります。州によっては、子どものいる車内で喫煙すると児童虐待で逮捕されるという州もあるくらいです。居酒屋に至っては568です。特に居酒屋の労働者は、若い女性が多いので、赤ちゃんを産む前の女性の職場環境としては非常に危険で、米国基準では緊急事態という状況です。

そして以外なのは、完全分煙しているファーストフード店の禁煙席でも32もあるという事実です。これは喫煙ルームからの汚染の漏れによるそうです。WHOは、このようなデータから屋内は完全禁煙以外を認めていません。ちなみに分煙を推進しているのは世界でも日本だけという特殊な状況です。

私たちは、遠く中国から飛んでくるPM2.5 を心配するのではなく、身近な喫煙室や分煙や喫煙可のレストランや職場、家庭の方を心配すべきではないでしょうか?特に今後、レストランを経営する雇用主や職場管理者にとって、従業員から受動喫煙訴訟を起こされるリスクが高いという点をお伝えしたいと思います。

最後にみなさんにお願いしたいことがあります。喫煙者が悪いのではありません。悪いのはタバコなのです。喫煙者は実は一番の被害者なのです。本人は病気になり、家族や職場で受動喫煙を発生させてしまっているのです。ぜひ、喫煙者を助けてあげてください。

私たち日本人は、何を心配すべきか間違っていませんでしょうか?

2012年11月号掲載

歯とお口の健康#5
10歳若く写真に写るスマイルトレーニング


児玉秀樹 平22年大学院経営管理研究科卒

神戸慶應倶楽部のみなさん、こんにちは。今回は若さについての話題です。

かつて秦の始皇帝は、不老長寿の秘薬を手に入れるために、遥か彼方の日本の和歌山にまで海を渡って使いを出したといわれています。不老長寿は遥か昔からの永遠のテーマともいえます。

多くの女性はお化粧をして美しく着飾っています。10歳若く写真に写るためにはお肌をお化粧で着飾ってそれでおしまいなのでしょうか?化粧品の多くは、お肌、つまり皮膚に注目しています。例えば、女性向けの化粧品のCMなどを見ていても、美白、ハリ、うるおい、弾力、ベビー肌、マイナス5歳肌、脱乾燥肌など多くのキャッチコピーがあふれています。お肌に必要なのは、ハリでしょうか?うるおいでしょうか?それともSK−U?ドモホルンリンクル?などの化粧品でしょうか?いったい何が必要なのでしょうか?
それは、皮膚そのものも大切ですが、実は、お肌の下に隠れている筋肉がとても重要な働きをしているのです。

お顔の下には顔面表情筋という小さな筋肉が走行しています。しかもそれが、浅層、深層と何重にも重なっており、およそ30近くもの筋肉があるといわれています。この顔面表情筋は、表情を形作る大切な機能を担っています。そしてこの顔面表情筋があるというのは、二足歩行と同じくらい、他の哺乳類とは違う、人類の大きな特徴だそうです。人類は、他の哺乳類と違い、大昔から言葉や表情で細かいコミュニケーションを取ってきました。ネズミには表情はありません。このコミュニケーションこそが人類に言語をもたらした生みの親だといわれています。ですから人類だけが、顔面表情筋が発達しているのです。
「性格は顔に出る」これは昔から言われていることです。怒りっぽい性格の人は、いつも眉間にシワを入れているので、皺眉筋(シュウビキン)という眉間にシワを入れる筋肉が発達しています。つまりテレビの悪役の方は、日ごろから皺眉筋を鍛えているために、悪役っぽい顔になってしまうのです。逆に性格の優しい方は、目じりが下がる筋肉が発達しているのです。

また、顔には、朝の顔と夕方の顔に違いがあることはご存知ですか?夕方になると、顔面表情筋が疲れてきます。そうすると重力に負けて、下に下がっていきます。つまり疲れた顔、いわゆる老けた顔になっていきます。
つまり、10歳若く写真に写るためには、お肌のスキンケアだけではだめで、表情筋のトレーニングつまり筋トレが必要ということがお分かりいただけたでしょうか?

さて、筋トレの方法ですが、文章で書くと分かりにくいので、一つだけお教えいたします。ネットで検索していただいても色々な方法がでています。最近話題になっている「お笑い芸人のシルクさんの顔面表情筋の筋トレ」がとてもいいですので検索してみてください。または、次回児玉にお会いいただいたときに直接お聞きください。実習法をお教えいたします。

それでは、代表例として、顔面表情筋の筋トレのひとつ、スマイルトレーニングをご紹介いたします。この方法は審美歯科で行うのもですが、まず、鏡と割り箸を用意してください。そして鏡の前に座り、にっこり笑ってください。その際、口角(唇の端)が左右均等に上がっているかを確認してみてください(ポイントです!!)。割り箸を唇と平行にすて確かめると分かりやすいです。ほとんどの人の場合、どちらかが上がっていません。
この口角は笑顔作りに重要な顔面表情筋がつながっています。それは、ほお骨とつながる大頬骨筋と小頬骨筋、そして口角挙筋などです。これらの筋肉を鍛えることで、笑顔が美しくなります!鏡を見ながらおよそ10秒間、筋肉を引っ張って笑顔を出し続けてください。10秒後に力を抜きます。結構疲れますよ!!この時、わずかに左右の小臼歯が見えると、とても素晴らしい笑顔になります。これをスマイルラインといって、審美歯科ではここを重視します。この筋トレを1日に3回繰り返してください。

これを日々、繰り返してしていただくと、お友達との食事会や、商談などの時、写真を取る一瞬に笑顔が出せるようになります。一度試してみてください。

2012年6月号掲載

歯とお口の健康#4
骨粗鬆症・関節リュウマチの薬でアゴの骨が腐る?


児玉秀樹 平22年大学院経営管理研究科卒

神戸慶應倶楽部のみなさん、こんにちは。

さて、みなさん高齢者が寝たきりになるきっかけで最も多い原因は何だと思いますか?それは転倒による骨折です。特に大腿骨や股関節の骨折の場合、長期にわたり入院が必要となったりします。その場合、廃用症候群というものが起こります。

この廃用症候群というものは恐ろしいもので、たった1か月入院しただけで、筋肉の量が半分になってしまう事さえあるそうです。そして、元の筋肉量に戻そうとすると半年以上の時間がかかってしまいます。若い方でも入院をご経験されたことがある方は、体が弱くなり立てなくなることをご存じだと思います。廃用、つまり、筋肉が使われなくなってしまったので、廃用していく訳です。宇宙飛行士が地球に帰還すると、重力に負けて立てなくなってしまうのも同じです。このように転倒による骨折をきっかけとして、入院し、廃用症候群をおこし、寝たきりになってしまうのです。

そういう恐い骨折なのですが、そもそもなぜ高齢者は骨折をしやすいのでしょうか?実は高齢者の多く、特に女性の8割が骨粗鬆症になっていると言われています。そういった方は年々増加しており、無症状で気づいていない方も含めるとおよそ1000万人以上と言われています。

それでは骨粗鬆症とはどういった病気なのでしょうか。それは、骨の仕組みを知る必要があります。骨は毎日作られ、そして、毎日壊されています。医学用語でいうと、骨芽細胞が骨を形成し、破骨細胞が骨を吸収しています。それが毎日バランスよく行われているため、骨が一定の形をとどめているのです。

ところが、ヒトは高齢化すると、骨を作る骨芽細胞の働きが衰えてくるため、骨がスカスカになって骨折しやすくなってしまいます。これが、骨粗鬆症です。特に女性の場合、女性ホルモンのエストロゲンが閉経と共に急速に減少していきます。このエストロゲンは骨を作る骨芽細胞の働きを高める作用があるため、女性ホルモンの減少とともに、骨を作る作用が急速に低下し骨粗鬆症になっていきます。

みなさん、骨粗鬆症が寝たきり予防でとても重要なことはお分かりいただけましたか?それでは、骨粗鬆症に画期的なお薬があることをお知らせいたします。それはビスフォスフォネート系のお薬です。これは、骨粗鬆症にはとても良いお薬で広く使われています。この薬のおかげで多くの方が寝たきりにならず元気にされています。しかし、あまりにも多くの方に使用されていため、重大が副作用が報告されるようになってきました。それが、歯科治療において、骨が腐るという副作用です。しかも激痛でほとんど治りません。

 はじめ、ビスフォスフォネートは歯科治療、特に抜歯の時だけに注意が必要と考えられてきました。しかしどうやら抜歯だけではないようです。現在、歯科治療をしていなくても、歯ぐきに歯ブラシなどで、ごくわずかなすり傷ができただけの方が、一気に骨が腐っていくという症例まで報告されています。ですから、歯科医院の問診に、「骨粗鬆症・リューマチのお薬を飲んでいますか?」という質問があるのです。最近の歯科医院の問診には、ほとんどこの質問が入っていますよね。あれ?リューマチ???

 実は、リューマチ治療にもビスフォスフォネートが使用されています。また、骨に転移したがん患者にも投与されています。しかも飲み薬だけではありません。点滴もあります。ですから、患者さんが知らない間にビスフォスフォネートを投与されている方はとても多くいらっしゃいます。

 会員のみなさん。ぜひ歯科医院に通う時には、医科の主治医の先生にビスフォスフォネートを投与されているかを聞いて、かかりつけの歯科医にそれを伝えてくださいね。

2012年新年号掲載

歯とお口の健康#3
歯周病と糖尿病が関係していた!


児玉秀樹 平22年大学院経営管理研究科卒

神戸慶應倶楽部のみなさん、こんにちは。

さて、みなさんは糖尿病と歯周病が関係あるってご存知ですか?第一回目では、歯周病と心臓病との関連についてお話しいたしました。今回は糖尿病です。みなさんは、歯周病とは歯がグラグラする病気だというのはご存じだと思います。歯周病は成人のおよそ8割の方が、軽い重いなど程度の差こそあれ、なんらかの歯周病に罹患していると言われています。しかしほとんどの方が、自分がまさか歯周病にかかっているとは知らずにおられます。このエッセーをお読みになっているみなさんも実はたぶん歯周病です。

歯周病が気づかない原因は、大きく2つの要因によるものです。それは歯周病が痛みも無く進行していく事と、歯ぐきではなく骨が溶けていく病気のため、目で見えない事によるものだと思います。歯周病用歯磨き粉などのテレビCMなどで、歯がグラグラしてきたり、血がでてきたり、歯ぐきが痩せているというイメージを歯周病に抱いてしまっていませんか?実は、歯周病のほとんどは、こういった症状が出てきません。テレビCMのような症状が出てきてしまったら、すでに歯周病は初期の軽症ではなく、中期から後期の重症に移行していることがほとんどです。つまり、歯周病を歯ぐきが溶ける病気だと誤解されている方がほとんどなのです。実は溶けているのは歯ぐきではなく、歯槽骨という歯を支える骨が溶けているのです。

それではまず、歯周病とはどういう病気かご説明いたしましょう。歯はカルシウムでできており、非常に硬い組織です。これを歯周組織という有機質で支え繋ぎ止めています(次図参照)。

まず、歯には表面のエナメル質、歯茎の下のセメント質や象牙質、そして、よく歯の神経と言われる歯髄とに分かれます。歯周組織の中には、いわゆる歯ぐきという歯肉と、それを支える骨である歯槽骨、そして、歯根膜という歯と骨をつなぎとめる繊維とでできています。ハミガキはもちろん大切なのですが、定期的な歯石取り(歯石クリーニング)がとても重要です。この歯石取りを怠っていると、そこに歯周病菌が繁殖していきます。そうすると、炎症が起き、歯槽骨とセメント質をつないでいた歯根膜という繊維が溶け、炎症が広がり骨が溶けていきます。これが歯周病です。

この歯周病というのは、実は炎症であるという所が糖尿病との関係においてポイントなのです。炎症が起きると、色んな物質が分泌されます。例えるなら、「細菌がここから侵入してきたから、みんなー、防御態勢を取れー!」って免疫細胞が叫んだようなものです。その呼びかけに使用されている物質をサイトカインと言います。このサイトカインの一種TNF−αやIL-1などという物質が糖尿病に大きく関与しているのです。
それでは、糖尿病と歯周病の関係ですが、まず糖尿病とはどういう病気でしょうか?糖尿病は、日本では700万人以上いると言われている大変恐ろしい病気です。糖尿病になると一生透析をしなくてはならなかったり、手や足が腐ってしまったり、失明の大きな原因となったりします。糖尿病は全身に多くの合併症を引き起こし、死に至らしめてしまう恐い病気です。この糖尿病の原因の一つに、インシュリンという血糖値を下げる物質があります。最近の研究では、歯周病の炎症物質であるTNF−αやIL-1などという物質がインシュリンの分泌を少なくするという研究もあるようです。

このように歯周病は糖尿病や心臓病など、全身の多くの病気と関わっているのです。

2012年新年号掲載

歯とお口の健康#2
口腔ガンとタバコ


児玉秀樹 平22年大学院経営管理研究科卒

神戸慶應倶楽部のみなさん、こんにちは。私は研修医時代、タバコが歯周病を悪化させ、入歯になる年齢を早期化させるのは何度もみておりましたが、ある時、タバコと口腔ガンの関係に衝撃を受けました。私が担当したおばあさんは舌ガンでした。そのおばあさんは、一切タバコは吸ったことはありませんでした。

日本では、こういった症例の多くが非喫煙者に分類されています。しかし深く問診すると、ご主人が何十年もちゃぶ台の向かい側で喫煙されていたようです。日本の家屋は天井が低いので、受動喫煙を何十年も重ねてきた結果なのだと思います。この方もすぐにお亡くなりになりましたが、この時から、私はガン予防としてのタバコ対策の重要性を認識しました。

さて問題です(答えは末尾にあります)。
問1)日本では受動喫煙で年間何名が死亡しているでしょう?
(1)1,200人  日本の殺人事件死者数と同程度
(2)4,800人  日本の交通事故死者数と同程度
(3)6,800人  阪神大震災と同程度

写真のように、家族がタバコを吸うと家の壁紙が黄色くなるように、子供の歯ぐきも黒くなります。歯科検診ではこういった子供たちを多く見かけます。また子供のいる車内で吸う方も多くみかけます。

問2)換気扇でタバコを吸うようにしていますが、吸った後、何分後なら、子供をだっこしていいですか?
(1)3分   即席ラーメンができる程度
(2)15分   阪急電車で、三宮から西宮北口までと同程度
(3)40分   新幹線で、新神戸から米原程度

タバコは吸っている本人はフィルターを通しているので、発がん性物質はかなり抑制されます。しかし、受動喫煙を受ける家族や従業員はおよそ50倍の発がん性のある副流煙を受けることになるのです。ですから、喫煙は本人ではなく、家族や従業員を殺してしまうのです。

また空気は水よりも良く混ざります。プールの半分は放尿してもよく、半分はだめというプールでは、だれも泳ぎません。しかし、分煙のレストランはなぜか日本人は気にしません。店長や社長は、労働安全衛生法により、労働者の安全を確保する義務があります。今後、受動喫煙に関しての訴訟が多発する可能性があります。神戸慶應倶楽部の会員は、社長さんや管理者などの方が多いので今後注意する必要があります。訴訟の勝敗よりも、会社のイメージに大きく関わります。

日本人はガンになってからの治療技術の向上には熱心です。しかし、ガンの予防に関してはあまりにも無頓着すぎます。喫煙者が悪いのではありません。その危険性を知らされていないのです。口腔ガンは他のガンと違い、顔の半分が無くなってしまうなど、あまりにも悲しい姿になってしまいます。そうなってしまう前に、そうならないように、多くの人が助かっていただければと、切に願います。

解答 問1)(3) 問2)(3)

2012年新年号掲載

歯とお口の健康#1
口腔内細菌と心臓病が関連していた!


児玉秀樹 平22年大学院経営管理研究科卒

神戸慶應倶楽部のみなさん、こんにちは。このたび齋藤さんよりBRBにて歯科のコラムのご依頼をいただきました。今後数回にわたり、歯と体の健康についてお話ししていきます。また、なるべく医学用語を使用せずに、口語体で分かりやすくお伝えしていくつもりです。よろしくお願いいたします。

さて、みなさんは歯医者さんで定期的に歯石取りをされていますか?たぶん読者の4分の1しか定期的には行かれていないはずです。成人のおよそ8割が歯周病と言われていますので、多くの方は痛みが無いので気づいていない方が多く、放置されていると思われます。しかし、歯周病は、痛みも無く、歯茎に変化も無く、骨が溶けていき、そろりそろりと進行していきます。そして、歯が揺れ始めたときにはもうすでにかなり進行してしまっていることが多いのです。

お口の中には、多くの細菌が存在します。というか、お住まいになっています。人間は、お母様の胎内から生まれてきた時、無菌状態で生まれてきます。その後常在菌という普段触れていても問題ないような細菌たちが体中にまとわりついて人間と共生しているのです。

ですから、お口の中も歯周病菌や虫歯菌などを代表として、多くの細菌が住んでいます。また、カンジダというカビの一種も住んでいます。それで当たり前の環境なのです。
最近、歯周病が進んでいる患者さんで、心臓の病気になられた方の心臓組織から、お口の細菌が発見されるという事がありました。みなさん方の中で、すべって転んで膝を擦りむいたではなく、心臓を擦りむいたなんてかたおられますか?たぶん世の中には、そんな方はおられません。つまり、心臓は体内にあるのでケガをしてバイキンが入るなんてこと絶対にないはずです。ところが、心内膜炎など心臓の炎症はどこからか細菌が侵入しているのです。

犯罪捜査などでもDNA捜査というものが行われるそうです。そういえば過去の死刑囚などの再審事件で、DNA捜査をやり直すと犯人ではなかったとかありましたよね。そのDNAを調べたそうです。そうすると、心臓の中に、なんとお口の細菌が見つかったそうです。
つまり、歯周病菌などお口の細菌は、炎症を起こした病変部位などの血流を通って、遠く心臓にまでバイキンが達していたということです。

みなさん、僕は歯磨きしっかりしているし、痛くないから大丈夫って思っている方?歯は定期的に見てもらってくださいね。

次回は、口腔ガンとタバコのお話しです。